一皿02。深川めし。

埋め立てが始まり、海が遠くなった隅田川河口の深川。

その深川の街は、江戸時代は良質な魚介類が獲れ漁師の町として栄えた。この深川に、あさりをふんだんに使った名物「深川めし」がある。

この日、江戸時代最大の八幡さま“富岡八幡宮”にお参りついでに、“深川めし”の老舗、深川宿“富岡八幡宮店”に立ち寄ってみた。

さすが評判の店、予約なしの飛込みではとっても席など有り付けない混み方であった。

早々に諦め、少し離れた老夫婦二人で切り盛りしている小綺麗な店に入った。これが、外れないいい店であった。

ざっくりと切った葱と生のあさりを味噌で煮込んで、熱いご飯にぶっかけた丼。昔とかわらぬ味を守っているという。

久しぶりのいい味に、あさりの消化が心配なほどに、急いで掻き込む、若き時の食べ方になった。

帰り際、“美味しいかった。ありがとう。”の挨拶をしたおり、人良さそうな親父がぼっそりと、

  “このあたりは埋め立てで海が遠くなり、あさりは千葉
房総半島のもの”

と照れながら話してくれた。

江戸時代から深川漁師の船上料理として親しまれてきた漁師めし。時々は食べたくなる潮の香りがする、幸せな一皿、一丼であった。

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