一幸13。真知子巻きとエリマキ蜥蜴との合体。

平成、令和と元号を変え、青春を駆け抜けたわれらの昭和は、さらに遠くになる。

その遠くなったはずの昭和の影を、今、席巻しているファッションに見つけた。そのファッション発想の源流は、昭和の時代の2つの流行にあると断じ、その仕掛け人に、今もたくましく頑張る我らの同胞の影を感じると、昭和生まれ昭和に生きた友がいる。

その源流の一つが、 真知子巻きである。

戦後の復興がようやく軌道に乗り始めた昭和28年、番組が始まる時間になると、銭湯の女湯から人が消えるというほどのラジオのメロドラマ 君の名の主人公を演じる岸恵子真知子が、ショールを首から頭にかけて巻く 真知子巻きである。

また一つが、エリマキ蜥蜴である。

バブル湧いた日本列島の昭和50年後半に、ウーパールーパー、コアラ、なめ猫など、一大動物キャラブームが起こった。その中で三菱ミラージュのテレビCMなどで話題になった エリマキ蜥蜴の一大ブームである。

今、この二つの流行が合体し、化粧直しをしたファッションが、平成が終わる切れ目のこの時代に、大流行している。首に巻きつけ着飾っている“ショール型マフラーファッション”である。

このファッション、昭和を青春の時代に生きた我らには一見して、“あぁ、真知子巻きとエリマキ蜥蜴の合体だ”と確かに、認識できるのである。

首周りのハイカラーのショールは、その質量の多さに加え、インドのような感覚で色をぎっしりと詰められている。それを着飾るレディたちは、その華やかさに目を奪われ、その手軽さから、一時の眩しさを楽しむのであろう。

だが、ではある。

このファッションが、いじましくも、臆面もなく男どもの首周りも着飾っている。あぁ、我らの同胞も、である。着飾るレディたちの影に潜み、あくまでも引き立て役に徹するはずの男どもが着飾る。華やかに着飾ったレディたちが主役の舞踏会では、黒のタキシードであるべき紳士たちが、である。

そういえば、今、男どもが、帽子に始まり、時計、黒に決まりのタキシードが赤、金色と賑やかなとなり、そうして、このマフラーである。そういえば、ビジネスカードの名刺が面白い。肩書きが、それに所属のクラブが多くて、裏でも足らなく二折の名刺を持つ始末である。

今や、男たちは服装だけでなく、すべての面で過剰なほどの飾り立てているのである。

男は、動物のオスに成り果てたか。

鳥は際立っている鶏のオスを見れば歴然としている。トサカの色の赤さ、尾の壮麗さ、着飾りメスを誘う。ある鳥に至っては鳴き声足踏み踊りさえしてみせる。自然界では目立つことが、危険であるにもかかわらず命張っての命がけの求婚なのである。一方、メスの地味さは自信の表れなのである。

人間の男どもは、やせ我慢を捨てたのであろう。臆面もなく着飾り、求婚活動を日常化したのである。また、別の視点から見れば、過剰・誇張・多彩、これは、遊び心溢れた人たちの常でもあるのだが、いささか、うんざりするのである。

勇気も気概も失せた年老いた私は、色は白と黒、スタイルは常にシンプルと際立っことを捨て地味に、この過剰な極彩飾の世の中から身をすくめ、隠れるのである。

そして、平和な心静かな幸せな日常を手に入れたのである。

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