一皿04。塩おにぎり。

浅草の宿六は、今評判のおにぎり店である。

おにぎりの専門店があることにも驚きだが、ミシュランの星を一つ輝かせたとの報道に、さらに驚いた。それも、連日長い行列ができ、ついには警察署から対処を求まれる騒動までの賑わいと言うから、さらに肝をつぶす。

こうなると、暇な身覗きにのこのこと出かけるのが常なることだが、さすがにそのバカバカしさに体が動かない。

だが、そんなことを言いながら、私が買い求めるおにぎりがある。

昼を一人家で摂るおりなど、スタバからの帰り道、品質をこだわり日本各地の農家から直取引の農産物が売りのスーパーの売り場で、握るおにぎりを買っている。

それも、握るおばさんに、注文をつけて買うのである。
  “のりは要りません。それに,具も入れないでください”。
そこに,さらなる注文をつける。
  “藻塩を少し多めに振り、硬めに握ってください”
とお願いして握ってもらう、三角形120gの“塩おにぎり”である。

今は、そんな注文をする私を見覚え、すんなりと笑顔すら浮かべて握ってくれる。時には、今日の米の産地を教えてくれる。会話も弾むものになっている。

あぁ、そうか。

あの“宿六”のにぎり手は、さぞかし語りたいことが山とあり、こだわりと工夫秘策があるに違いないのであろう。

やはりここは、どうせ暇を持て余している身、一つ、天気の良い日に出掛けその評判の味を確かめるのも良いのかしれないと、今は思っている。

友と語ったことがある。最後の晩餐を何にするか。
今は、この幸せな塩おにぎりと言い切っている。

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