一景02。二つの燕子花。

自分が気に入った場所を見つける。
そうして、そこに時折出かける。それに勝る幸せはなかなかない。

燕子花がその盛りになるこの時期、気づくと、お気に入りの美術館の裏庭に向かっていた。太陽が新緑の葉に光る時、新緑の中で、群生した燕子花が一時の優しい命の輝ききを見せる庭なのです。

その庭は、煌びやかなブランドショップが立ち並ぶ青山にある根津美術館の裏庭。

今年も、どうやら、ぎりぎりのタイミングで間に合った。

燕子花の花は、どの花よりもその姿を刻一刻と変える。雨が降ったその翌朝、固い蕾が開き花を咲かせる。そして目を逸らしたその瞬間には、萎れ枯れていく。花の盛りに出会うのは難しいもの。

特に、美術館の庭に咲く燕子花の盛りに出会えるのは本当に難しい。そんな短い命の盛りの時に、今年も運良く出会えた。

この時期、その燕子花がその見頃を迎えるその時期、その根津美術館では、憎いことに、尾形光琳の代表作のひとつ『燕子花図』(かきつばた ず)屏風を展示する。

心憎い、粋な計らいをして迎えてくれるのである。今年も、二つの燕子花の歓待に久々の幸せなひと時となった。

まだまだ,運が味方してくれているようである。

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