一幸16。機械も人も喋ってはいけない。

私はよく旅をする。

時には海外にも出かける。その折、その国の通貨がいることになるのは当然な話で、ちょっと偉そうだが、私は、その利便性から取引銀行の一つを外銀にしている。

そこで、気づいたことがある。

その国の言葉で喋られても困るのだが、海外のATMは喋らない。日本では次々と追っかけ指示を声高々と出す、そのATMが沈黙している。不思議である。

私は思った。やはり、機械は喋ってはいけないのである。

また、銀行での接客はどうだろうか。外銀のガードマンはその務めを、沈黙と厳めしい顔つきで、時には銃すら肩から下げて、挨拶する気配もなく無言で果たしている。

当然、窓口の行員は口をきく。少し笑顔見せることもあるが、大抵は言葉少なくかなり無愛想である。

だが、一方、日本の銀行は一歩行内に入ると、警備人と案内役の行員が、ほぼ同時に決まった言葉で挨拶をする。兎に角、言葉を出しての挨拶をする。客が多い時は大変である。空に向け喋ることになっている。客の顔を見ての挨拶が難しい時は、ただ、笑顔の会釈で良いのである。

時には、人も喋ってはいけない時があるのである。

唯でさえ、騒がしい社会。

先ず、機械も人も黙ってみて初めて言葉の持つ大切さに気づく。

たとえ言葉でなくても人に伝わる仕草、笑顔がないといけないのである。本当の幸せなお喋りのあった昔の買い物を思い出す。

しかして、私は無口な外銀を選び静かな幸せを噛み締めている。

コメントはこちらから

コメントの表示が遅くなる場合がございます。