我が家には、20年近く住み着いていた愛猫がいた。

心臓肥大の診断を受けながら、利尿剤の投薬でどうやら命をつないでいた猫である。彼には実に規則正しい生活リズムがある。食う・寝る・グルーミングの三大行為を毎日規則正しく、なんの疑問なく繰り返していた。
そのうちでもグルーミングの習慣は特出していた。気づくとあの特有な作業ををやっている。少し大げさなに言えば、食う・寝る以外の時間はグルーミングと決めているかのような熱心さである。それも、その姿を見ると誰でもが、関心してしまう程に念入り、全身全霊込めたものである。
それに比べると私のグルーミングはおなざりで、しかも朝一度切り。それに、忘れる・手抜きと我が家猫からすれば、侮蔑ものであろう。
私のグルーミングは、引退時に、豊かな、私はそう思っていた、頭髪を切り落とし短髪にした折、生やし始めた”顎鬚”ため。
そのグルーミングのために、選んだのがフリップ製の髭剃り。その刃を4.5mm に合わせた。この4.5mmの長さこそが、念入りに慎重に選び抜いたこだわりの長さである。
この長さの顎鬚。ひとりで独立して主張していないのだが、と言っても、しつかりと髭と認識される実に微妙な長さであるとひとり悦にいつている。
現役時代にはゆっくりした時間が取れなかったそんな朝に、グルーミングのため、ゆっくりと鏡と向かい合う。こんな贅沢な時間習慣を持てる引退者の特権である。良い一日をスタートさせる朝の新しい習慣である。
しんみりと、満足が体にしみ込む幸せな一時を楽しいんでいる。
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