写真に、それほどの関心や知識を持ち合わせているわけではないが、そんな私にも好きな写真家が三人いる。
その一人が、フランス人の女性写真家、ヴェラ・マーサである。
東京のホテル、パーク・ハイアット、その40階に、カジュアルなフレンチレストラン“ジランドール”がある。その側壁全面に、144枚の彼女の写真で飾られている。その写真の全てが、老若男女の食事風景である。
プライバシーとかの小煩いことを言わない大らかな時代。カメラを意識しない自然な食事姿の写真を撮ることができていた良き時代のショットである。
友との邂逅、そうしての一杯。
なんと、いい写真であろうか。現役時代しめしあっては、よく飲んでいた昔馴染みのバーでの一景であろう。
これほどに、飲む人が周りに溶け込み、落ち着きを得るバーは、今の東京では思いつかない。現役時代繁く通っていたバーも、悲しいことにとっくに姿を消している。
そうだ。今宵は久しぶりに、この数年、連絡が途絶えがちで、会うことなかった友を呼び出し、一杯を。
そんな思いにさせる幸せな写真である。
コメントはこちらから