一皿06。 朝食にキャビア。

この夏の旅。初めてのモスクワでの朝、決まって通うことになったカフェがあった。

そのカフェ、朝の散歩道となったトゥペスカヤ通りに交差し、長細い伸びる公園を手前に折れて、少し住宅街に入ったところにある。

一日中、客が途切れない24時間閉めることのない店 “カフェ・プーシキン”である。

その店構えが少し秘密じみており、小さな店名プレートがドアにあるだけ。開店していることがわからないほど、つっけんどんな店である。

人の気配を感じ取り馴染み客風を真似て、さりげなくそっと入ってみた。そうして入った初日、始めに案内された席が少し薄くらいコーナーのテーブル席。

しかし、いつものもの癖がでて、朝の光が差し込むテラス席をと、はっきり笑顔で伝えた。

そうして、案内され通された席は、重厚な店構えの表からは想像もできない、朝の陽光が気持ちよく入り込んでくる窓際のテーブル。

斜め横では、近所の住人らしい上品な夫人二人が紅茶とブリーベリーが盛られた皿を前におしゃべりしている。いい朝の風景である。一気にお気に入りの店になった。

さて、この写真の一皿。まだ、夜の気配が消えきれない翌朝の一皿である。

そば粉が入ったパンケーキにキャビアをのせたもの。

さすがモスクワ。塩気の強い濃度のこい磯の香りのキャビア、と語りたいが,なにせ、ご覧の量、食べたと言えるほどの量ではない。

一缶、数万円はする珍味。まだ、勢いのある仲間がファーストクラスの食事でキャビアが出たと、語るのを聞くのが精一杯の高価な珍味である。

それに、モーニング・シャンペンと洒落てみるのも一興との思いを抑え、コーヒーと少し腰の引けたものになったが、今にしては残念が残る。

だが、モスクワの朝らしい幸せな朝食の一皿である。

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