猫には教わることが多い。
この寝相、なんとも羨ましい。大の字で、体が床にめり込みそうな緩み方での、赤子の両手上げの寝相。久しく遠ざかっている、遊び疲れた幼い時の熟睡である。
それに、一度、猫を抱き上げてみると良い。見事なほどに身を預けられる。その緩みを経験してみると、いつもの自分がどれほど身を強張り、身をすくめているかが、嫌という程に認識されられる。
見事な、猫の緩み2態である。
さて、皆さん。その老いさらぶれ、硬直が進む強張った体が、一時的にも緩み、その気持の良さにまどろむ、そんな猫の緩みを得るのは、それは、どんな瞬時ですか。
私には,辛うじて、二つの体の緩め方がある。私のとっておきの緩み方をご披露させていただく。
その一つが、サウナ好きの私が見つけたサウナのもう一つの効用である。私は、通常、90度を遥かに越えるサウナに一回り12分はいる。冬場などは6、7分過ぎても少し汗ばむ程度。その時は、半周り6分ほど余計にとどまる。時に、仲間と話が弾んだ折など、20分を過ぎる時がある。
私の仲間たちは、サウナから直行し、14、5度の水風呂に飛び込む。それが良いと言う。だが、私は、湯殿の横に据え付けられている、いつもの椅子に座り込む。
そこで、あれほどかいたはずの汗だが、それに勝る2度目の汗が出る。その時にさらに体が緩み、一時の眠りに落ちる。
そう、その瞬時に、猫の緩みを得るのである。
それに、もう一つ。寒風が吹く休日の朝早く、乗客がまだらな周遊の山手線に乗る。冷え切りこわばった全身を座席に預ける。窓から、弱いながらも朝の太陽が頭部、首筋、そうして背中を温め始める。
程なく、座席から暖房の暖かさがじっくりとお尻から這い上がってくる。一気に冷え切っていた体が温められ、睡魔が突然、襲う。目が開けておれない。深い眠りに落ち込む。リズミカルな車輪の音が眠気をさらに深みに落とし込む。
体は、座席に吸い込まれ始まる。冬にくいこんだ春の陽光と座席から這い上がる温かで、全身から全ての緊張を追い出さえ、幸せな緩みを体いっぱいに広げたのである。
そう猫の緩みを得たのである。
身も心も弛緩させ、一時の幸せを楽しむのである。
コメントはこちらから