一景11。緑色に遊ぶ。

今朝も朝早く、早足での散歩にでかける

朝の散歩の道筋は決まっている。先ずは、立派な老樹を見上げお互いの健やかを確かめ合い、朝の挨拶。

今朝は、老樹の様子が“おゃ”と思うほどに若やいで見える。

春雨混じりの暖かい日が続いたこの数日に、横に縦にと伸ばした枝先に若葉を一気に芽吹かせ、明るい彩りを老樹に添え始めていたのだ。

その老樹の下草も、生い茂る枝葉で遮られながらも漏れ来るわずかな陽の恵みを得て、背を少し伸ばしている。

眼をこらしてみると、そこには必ず新しい緑色を見つけることが出来る。どうやら、春が大きく動いたようだ。

一本一本と数えられるほどに隙間のあった木々も、鮮やかな彩り豊かな様々な緑色に染まり、その木々の隙間から見えていたビル影は、生い茂る若葉に遮られ見え隠れしている。

少し離れた先には、人手が入り綺麗に頭揃いで刈り取れた植え込みの若葉が、さらに勢いづき、やわらかな中間色の微妙な美しさを見せている。さらにその先は、木立や、めぐらされた簡単な生垣のどの草木もが、雲の切れ目から漏れる朝の明るい陽光を受け、彩り豊かな緑色で輝いている。

こうしてよく見ると、木立の間の地形の起伏が、萌え出ずる春の草木の緑の色合いを微妙に複雑にしているようだ。

光を受け輝く浅い色合いを見せる若葉、生い茂る木立で陽を遮られた草木は色も渋く暗緑色に、日陰の若葉は、逆光でぱっと目に明るい落ち着いた緑となって、目に飛び込んでくる。

こうした彩りを古の日本の人たちは、

   臙脂、朽葉、青磁、群青、江戸紫、浅葱、、、、

と、見事なきめ細さでその色合いを言葉し、日本の豊かな春が、微妙に移りゆく様を意識させ気づかせてくれる。

もう十分に、楽しませてもらった。ようやくに、帰路に着いた。

その路沿いに、葉陰に赤い花をつけた椿を見つけ覗き込む。その盛りには、人を魅入させたに違いない花が2、3つと根元に落ちている。また今朝、私の目を楽しませる2度目の務めをしている赤い椿の落花である。

いろいろな色を気付かされた、豊かな幸せな朝の散歩である。

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