久しぶりに銀座に出かけた。
いよいよ、不案内になった銀座。かつての馴染みの店も、華やかなブランドショップに占拠され、ビルの影や隙間に追いやられ、表通りから影をひそめてしまった。
だが、さすがに名店である。遠慮がちではあるが、それなりのしっかりとした構えで、昔の面影を決して失ってはいない。そんな姿を見るのは嬉しいものである。
この30年機会あるごとに、しめし合い夜の街に美味しい酒と肴を求めて繰り出す友と久々に酒肴をその銀座で一緒した。

今宵の店は80年近く酒好きに愛されてきた焼き鳥の名店。昨今、こんな店にも若い女性連れが押しかけており賑やかで華やかな店となってきている。排煙の工夫がされてはいるが、彼女たちの安くないファッションが気になるのは要らぬお節介だろうか。
それもしても、この店は実に美味しい。こだわり抜いた素材を備長炭で焼き上げた串ものは肉汁がたっぷり、歴史を背負う三代目の若店主の誠実さが味に滲み出ているようだ。

今宵もいつものように、砂肝、手羽先、つくねと進め、銀杏と椎茸と野菜を挟んで、レバ、間鴨、そしてまた砂肝で閉めた。
そんな華やいだ雰囲気に中での今宵の一杯、いつもの体と孫の話はすっかり影を潜め現役時代と同じような勢いのある話になったのは、嬉しい誤算である。
老人たちの一杯は、友と店選びが肝心。それさえ間違えなければ、いつもの幸せな夜を約束してくれるのである。
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