新しい友が増え、いきつけの店が一つ増えた。
現役時代は接待もあって、あれこれと食い飲みもしたものだ。だが、今は利用する店も少なく行きつけの店となると、丁寧な店選びとなるため更に少くなくなった。
そんな昨今、新しい馴染みの店ができた。

あるゴルフの大会で相交えた折すっかり気が合い、その後も幾度とプレーをするその友から誘われた寿司屋がそれである。
その友の店への拘りは、美味は当然のことながらオヤジの接客態度の妙にある。
この寿司屋は、現役時代、接待で幾度か利用した店でもあった。だが、悲しいことに味もオヤジも覚えていない。料理そっち退けのビズネスであったのだろう。なんと、もったいないことをしていたものだ。
創業が江戸末期、五代目の気の良いオヤジが無駄口を叩くではなく、気合いの入った寿司を握る江戸前寿司や,である。
やはり、江戸前寿司本来の古い仕事が残っている。
酢〆のコハダと魚のすり身と溶き卵を混ぜ合わせた生地を弱火でじっくりと焼き上げる卵焼き。この二つが、今、私の一皿となっている。

新しい店が生まれては消えていく。
そんな街東京で、老舗の懐かしい料理には、なぜか心が休まる。それも,何代もその味を引き継ぎ料理し続ける愚直なオヤジに会うと、さらに美味が増す。
すっかりお気に入りの寿司屋での幸せな一皿である。
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