一景14。終日、佇む二人。

赤い町、モロッコ・マラケシュを旅した折のショットである。

砂漠の地特有の強い日差しが、朝から、プールサイドに寝そべっている私に、遠慮なく降り注いでくる。その余りの暑さに辟易し、冷たい飲み物と涼を求めて宿を出た。

行き先はカフェと決めていた。

たどり着いたカフェは、迷路のように入り組んだ混沌としたスークの入り口、フナ市場に面しており、風が通り抜ける屋上にはテラスがある。そのテラスからは、遠くアトラス山脈が望めサハラ砂漠への旅を夢見るには、これほど良いカフェは他にはない。

それに、このカフェは、我ら世代の誰もが憧れた往年のロックスターたちが終日過ごしたカフェでもある。

この暑さでは、カオスの中へ入っていく覚悟ができず、スークへの探訪は止めにした。その代わりに、旧市街を囲む城壁に沿って少し車を走らせることにした。この城壁は、東西2km、南北3kmと新市街とを隔てる赤色のレンガの城壁である。

城壁に沿いに10分ほど車を走らせた時、城壁に影のように佇み話す二人の姿を見つけた。

“あぁ、絵になるいい風景だ”と思いながらも、その折は通り過ぎし、マラケシュの街を走らせ、3時間ほど経っての帰路、先ほどと全く同じ処にその二人が同じ姿で佇み語り合っているのに、また出会った。

その折、急ぎ車窓から写真に収めたのが、このショットである。

長年の友だろう。
終日語り合っても尽きぬ思い出を共にしたのだろう。穏やかな静かな人生を重ね幸せな晩年を迎えた二人。そんなことを思わせる、なんと羨ましい幸せな風景だろうか。

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