一旅13。 司馬遼太郎と東山魁夷が交差する。

兎も角にも、私は道そのものが好きである。

私の旅はRoad Trip。決して、飛行機や列車での旅をしようとは思わない。気が付くと車で走り出している。その延長線に私の旅の日常がある。

そうした中で、行きたいと思いつつも長年断念していた場所がいくつかある。そのうちの一つの種差海岸に、遂に車を走らせた。いろいろな思いが待つ700kmの車一人旅である。

思わず裸足で走り出しなる牧草が、一面に広がる北国の海岸とは思えない穏やかな海岸。司馬遼太郎が友人の口を借り地球に初めて渡来する宇宙人に見せたい地球で一番美しい海岸と言っている、八戸の種差海岸である。

広く海岸に沿って広がるその牧草地を、サッカー少年たちが急勾配の斜面を利用しての走り込みを見るとなく眺めていた。ふと気づくと夜の気配が這い寄ってきていた。

北国の夜は一気にやつてくる。鶴瓶落としである。

今宵の宿を求めて、海岸線に沿って小高い丘に向かって長く延びる一本道を、車を走らせた。この道が東山魁夷の”道”の原風景となった一本道である。

夕闇が追っかけてくるその時刻に、“その道”を、遂に、車を走らせることが出来のである。

この作品“道”は皇居の近くの東京国立近代美術館にあり、定期パスを買えればと思っているほどに通っている美術館にある。

魁夷特有の淡い緑色の牧草地に沿って、真ん中にすっと伸びている一本の“道”。残された時間が少ないながら、どうにか明るい気持ちで先に進むことを後押ししくれる、そんな絵である。

そんな優しさを感じさせる原風景の道を今、車を走らせている。

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