一人酒が多くなった。
そんな夜、酔歩で帰る。それがなんとも心地良い。
友を呼び出し、しめし合い飲む夜も楽しいのだが,なんとなく
それも億劫になってきた。その酒も現役時代は、あれこれと美味しい店を探して遠出したものだが、今は、家の近く、遠くても一駅の距離の馴染みの店と限られてきている。
料理がそれほど美味しいわけでもなく、安いわけでもないが、近くであるとか、お気に入りの路地にあるとかで通う店である。
ただ、季節により通う店に片よりが出る。夏の気配がしだした薄暮のときに向かう先は、ビル影に沈む夕日の姿が望めるオープンテラス。その片隅の椅子が目当てとなる。
また、人肌が恋しい季節が近づくと、お気に入りの路地奥から漏れてくる暖色の灯と弾む声に誘われ迷い込む。そこに、ひっそりと佇む小料理屋、そのカウンターの奥端の椅子を目指す。
いずれの店も顔なじみの人たちと目線に出会い、黙って座っても好みの酒と肴が一先ず出される。気心の知れた居心地の良さが約束されているそんな店なのである。
今宵も、また、気づくと、そんな気のおけない店のいつもの椅子に腰掛けていた。さぁ、今日の仕上げの一杯だ。
だが、こんな店も“おや”と思わせる顔を出し始めた。家に近く、ほどほどの料理、なんとなく手軽さで通っている店で、私への扱いが少し馴れ馴れしく心配り気配りがなくなり始めた。そうなると,また、店探しが始まる。
こんなことの繰り返しながらの一人酒。
もう、そんな夜が面倒になりかけている。そろそろ,手料理での我が家で一杯を楽しむが良いのかもしれない。
だが、あの酔歩の幸せは捨てがたい。さて、どうしたものだろうか。これはこれで、幸せな悩みである。
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