一幸60。一人、家で過ごす。

今、2ヶ月に一度の頻度で会う友がいる。

会うたびに身の無事をそっと確かめ合い、そうして、お互いにほっとする。
二人とも 少しずつ老い 時々会い   
         時実新子

それに、悲しいことに友の訃報に接することが多くなった。    
桜の あまりにも早い 散華
         紅葉寺 蘭
と歎息をつく。

時には、友とよく通った割烹を久々に覗いてみるかと思いつき、今宵に、一人出かけいつも友が座る隣の席をそっと窺った。
さまざまの 事思ひ出す 桜かな  
          芭蕉

そう言えば、時間を見つけては一人車を走らせていた旅好きの私が、久しく旅に出ていない。あれほどに好きであった旅先での酒肴を求めての一人歩きが、それほど心を躍らすものでは、なくなってきている。

今では一人、家で書棚を背にぼんやり暮れ行く空を眺めながら想いに耽る時間が増えている。
       明日ありと 思う心のあだ桜
             親鸞

そろそろ、あれこれと身の始末に、考えを巡らす時が来たようだ。

余り時間が日々なくなっていると、急かされる。
     死に支度 いたせいたせと 桜かな
          一茶

窓から見える夕暮れの空は、どんよりと黒雲に覆われ冷たい雨もふりだした。 なんと、静かにゆったりと時間が流れることか。

こんな穏やかな時間の過ごしかたが、おゃと、思うほど幸せになって来ている、今この頃なのです。

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