一皿16。深川豆腐。

この一皿、老舗の一品である。
湯島天満宮から少し坂を下がったその一帯は、昔は花街であった。

そんな風情を残す街角に、創業大正14年と言うから100年近い歴史を背負う酒場、シンスケがある。この酒場、東大と芸大のご近所のお店。語れば尽きぬ物語と名品が数多くある。

寒さの緩んだ今宵、選んだのは、深川のあさりを豆腐の上に載せ、さらに殻付きのあさりを鍋底一杯に沈めた深川豆腐鍋。

この店が用意している名酒、両関大吟醸の冷での一杯に、良いお供である。気の合う昔馴染みの仲間との良い夜を、楽しいものにしてくれた。

当然、その帰り道は、老舗バー“ EST”への道筋。

体調を崩し、出ることがまれになった親父さんに会えるかと、微かな期待を抱きながら立ち寄る。やはり、叶わぬ夜となった。

軽く一杯ひっかけ、少し欠け始めたフルムーンを背に抱え賑やかな横丁を抜け家路に急いだ幸せな夜となった。

コメントはこちらから

コメントの表示が遅くなる場合がございます。