一幸80。ご飯が主食。

焼き魚定食をフレンチ・スタイルで食べてみる。

時々、少しおかしいと思うことがある。料理番組で、料理の美味しさを褒める言葉に戸惑う。“ご飯がすすむ”美味しい料理という言い回し方である。

だが、それが成る程と納得のいくシーンもある。

満腹が大事なサラリーマンたちのお昼時、男女問はず、無言で、ご飯茶碗を片手で持ち片時も手から離さない。ここでは、主菜が、肉であれ、魚であれ、それが、例え、すき焼きであろうが、それらは“おかず”であり、やはり“主”食はご飯なのである。ひじきと漬物とご飯がさらに一層すすむ副菜が添えられている。

“ご飯がすすむ”料理が美味しい料理なのであろう。料理の褒め方として、“ご飯がすすむ”。この言い回し方に合点がいくのである。

だが、ランチと雖も“美味しいものを少々”が、我ら老いたる者たちの食事。そこで、私の試みをご披露したい。添えた写真をご覧頂きたい。

お馴染みの“鯖の塩焼きのランチ定食”である。

ご飯を後ろに下げ、鯖を手前に置き換えてみた。どうだろう、主菜の鯖が文字通りに主食に、ご飯がフレンチでのブレッドの位置に、見事に格下げされ副食になる。

こうすれば、食べる意識が鯖に集中される。思わず、こんな独り言を言い始める。

   “あぁ、この鯖、今が旬。やはり旬ものは美味しい。”
   “おや、ここは炭火の直火焼きだ。やはり、ね。”
   “この鯖はどこの河岸で水揚げされたのだろうか。
   ”そう云えば、去年、千葉の房総で食べた鯖、
    それに、旅先の富山の珠洲での鯖は、見事だった。”

と独り言を漏らしながら、主菜の鯖に集中し、ゆっくりしたテンポでの記憶に残るランチを摂れるのである。

それに、気づくと意識から外れたご飯は、半部ほど残すことになり、炭水化物を抑えたダイエットが知らず知らずのうちに出来ているのである。

かつては、周りの目が気になっていたが、今は、この食べ方がすっかり板につき、たとえ、居酒屋のランチ定食もフレンチ気分で食べられ、その上、お腹の膨らみも緩みも現状維持の幸せを手に入れたのである。

独りで、ふっと笑みを浮かべる幸せを噛みしめている。

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