一旅21。旅先の朝食 。

旅は、日常からはみ出した時間となる。

そのはみ出しかたが大きいほど、旅している実感が大きく、その記憶が鮮明である。特に、旅先の朝は大切である。

そうした旅の中で飛び抜けた朝を並べてみた。
   “Perfect way to begin the day!”

フィリピン、パマリカン島。


マニラからホテル専用機で一時間、アマンプロが専有する小さな島、パマリカン島に到着する。

そこでの朝は、南洋の眩しい太陽と砂浜に寄せる波の音が、目覚ましとなる。そんな朝は、当然、裸足で海辺に降り朝日に光る海を眺めながらの散歩となる。

やがて、小さな鈴の音で呼ばれる。朝食の用意ができたようである。日焼けした顔に満面笑みを浮かべた若いバトラーが、果実を山積みしたテーブルで、ヨーグルト、目玉焼きとメープルシロップがいっぱいかかった小さなパンケーキ、それに熱いアールグレイでの朝食をサーブする。

トルコ、カッパトキア。


高台に巧みに建てられたホテル、その寝室の窓から優しい風が舞い込んでくる。彩り豊かなバルーンで埋る空が目に飛び込んでくる、そんなデッキでの朝食となる。

その朝食は、オスマン帝国時代の1日2食の名残を受けたボリューム満点な、Turkish kahvalti。トルコチャイとともに、時間をかけた朝食を摂る。

フランス、パリ。


旅先だが、都心での朝は街好きの私、ホテルでは決して摂らない。

パリの朝は早い。目覚め共にホテルを飛び出し、昨夜、見つけておいた小さな新聞スタンドに直行する。チーズとハムのバケットをコーヒー片手での忙しい立ち食の朝食を、働く人たちに交じりわり摂る。

NYでの朝は、なんの躊躇もなく、ドーナツ・ショップでの熱いコーヒーとドーナツなる。

こんな朝から、旅先での一日が始まる。日常に飽きた心は、旅先での朝食の思い出に還っていく。

これそれ左様に、私の旅には、はみ出しかたが大きい朝が待ち構えており、一層に私の旅心を刺戟する。

日常に飽きた心は、こんな朝に出会い、旅している実感を大きくし、鮮明な旅の幸せな記憶となる。

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