京の街には、幸せにしてくれる風景がある。
仁和寺から、だらだらと下るその坂の両側には、小さな穏やかな住宅街が広がっている。その坂を下りきった先が、嵐電の無人駅、御室仁和寺駅である。
その駅のプラッホームで電車をぼんやりと待つ、買い物かごを手にした主婦を見かけた。
その主婦の先には、先ほど訪ねた仁和寺の山門が見え隠れしている。
今朝早くホテルを出て、北野天満宮にて初詣を終え、“きぬかけの路”沿いに、金閣寺から龍安寺、そうして仁和寺と足を伸ばした。
直線距離にするとほんの3km足らず。ぶらぶら歩きの最終地点である。
この仁和寺、春の季節ともなれば御室桜で人を呼ぶ。
歴史に関心ある者は、還俗して、戊辰戦争で西軍の征討大将軍となった純仁法親王の錦の御旗と軍服、それに、全長40mの伏見の戦いの絵巻を目当てにやってくる。
もう一つ、意外に知られていないのが京都三大山門の一つである山門。
唐獅子、阿牛の仁王像が鋭く睨みを利かせ、しっかりと守りの役割を果たしている。
今朝の散歩の狙いは、この山門を拝むこと。
その険しい様相の守り像が鎮座する山門が、穏やかな日常の風景の中でなんの違和感もなく溶け込んでいる。
京の街の魅力は名所旧跡だけでない。
思いついては訪れる京への私の旅は、こんな出会いを求めてのものとなる。
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