一皿30。パルメザンチーズとリゾット

久しぶりのラ・ビスボッチャである。

創業30年を迎える老舗。同じアパートのボローニャ出身の住人に連れら行って以来、馴染みになった店。近所のアッピアや霞町のキャンティと共に、繁く通っているイタリアンでもある。

昨夕、散歩ついでに、ぶらりと立ち寄った。

このコロナ騒ぎの中、驚くことに満席と断られそうになったが、ラッキーなことにキャンセル席が出たとのことで、高い天井のメインダイニングの席に案内された。

その席からは、炭焼き釜を併設したオープンキッチンの活気ある調理風景が見て取れる。

席に着き、懐かしく店内を見渡していると、やがて、おなじみのワゴンがやってきた。

メニューをなくし、ワゴンのみにしたアッピアほどの徹底さはないが、ワゴンの上の食材を見せながら、今夜のお勧めをプレゼンし始めた。

楽しい夕べの始まりである。

今日のお目当ては、Tボーンステーキは当然として、決まって楽しみにしているパルメザンチーズのリゾットがある。

半世紀昔、若かりし時代、NYで感激したデザートがあった。 

10オンスを越す、ぶ厚いステーキを食い上げた後、友人の勧めるままに、デザートでクレープシュレットをたのんだ。

その折、年老いた給人が、我がテーブルの真横で、クレープシュゼットにコアントローを入れ、火をつけて大きな炎を舞い上げて仕上げたのだ。

そんな思い出に繋がるパファーマンスで、そのリゾットは我がテーブルの真横で仕上げられた。

そうして仕上ったリゾットは、当然、米一粒一粒にたっぷりとパルメザンチーズが絡み、それが舌の上で溶け、噛むごとに米の粒が静かに潰れ、待ち構えている喉に滑り込む。

その度毎に、香りと甘みが舌と喉を刺激し、美味しさに顔が緩む。そんな見事なリゾットである。

私のテーブルをサーブする彼に、思わず頷く。彼も笑顔で頷く。彼が、この店を仕切る日が、そう遠くないと思わせる良い接客である。

コメントはこちらから

コメントの表示が遅くなる場合がございます。