一皿31。小恐竜、ムツゴロウを食べる。

この冬、有明海に立ち寄る機会に恵まれた。

日本で一番潮の干満差が大きく、130種もの魚類が生息を許される恵の海、その有明海。

ずいぶんと昔のことになるが、福岡の寿司屋で、その正体を伏せられ勧められるまま、食べた刺身と寿司がある。食べた後、その正体を聞かされ、大いに驚いたものだ。

その主こそがムツゴロウで、その怪魚が生息して地が有明海の干潟である。

このムツゴロウ、漁師たちに下膨れの愛嬌のある顔が人気で、みな有明海のアイドルと惚れ込んでいると言う。

20cm少々の体をもつムツゴロウは、有明海の泥上を胸ビレで歩く、正に、“小恐竜”である。

その当時、驚きが大きく、ムツゴロウの味の記憶は、ぶっ飛んでいるが、見た目とは大違いで、口にすれば、少し脂っこさが“ハゼ”に似ていると評価がたかい。

生息地干潟のドロンコのイメージが消え、ただただ、すっきりした白身の甘さが下に残ると評判の味である。

そのムツゴロウとのネーミングは、むつ=脂っこい ごろう=ハゼ との由来とか。いいネーミングである。

また、その有明海では、“若い人の尻の穴”と言うワケノシンスケ、それに“生きた化石ミドリシャミセンガイ”のメカジャという奇妙な魚介類が獲れ、その珍味を地元の人たちは楽しんでいる。

私が訪れた時、その広大な泥質の干潟を見せるまでには、有明海は潮が引いていなかった。

今回は、車を飛ばし福岡空港に向かう、空いた時間を利用しての立ち寄り。

残念ながら、地元の寿司屋で、その珍味類を味わう段取りとはいかなかった。

漁師たちは“むつかけに乗っての伝統漁法”で、ムツゴロウを鉤針で引っ掛ける捕獲する。

次回は、その漁法を見た後、心いくまで漁師で賑わう地元の寿司屋で、彼らの自慢話を聞きながら、“若い人の尻の穴”ワケノシンスケと“生きた化石ミドリシャミセンガイ”メカジャをつまみに、小怪獣ムツゴロウの握りで、驚きの一夜過ごしたいものだ。

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