一幸90。犬の友。

A walk with man’s best friend。

いつもは、退屈が忍び寄り始めると車に飛び乗り、旅に出かける。だが、ここはアメリカ。そう簡単にはいかない事情がある。

先ず、車でつまずく。
息子に断わって彼の車を借りるという一手間が必要となる。

さらには、アメリカで、車を運転するとなると、私の年齢と地理の不案内を心配する息子たち夫婦に我が女房殿も加わり、6個の眼がNOの信号を点滅し始める。

仮に、この難問を解決しても、さらに幾つかの難問が持ち構えている。

日本とは逆の右通行。それに加えて、道不案内なことから、カーナビ頼りとなるが、このカーナビは、あちら訛りの英語を喋る。

そんなこんなことで、このアメリカでは、車を走らせ、日常に忍び込んでくる退屈から逃げ出す手立てがないのが、現状である。

そこで今は、そんな時は、一先ずと家を抜け出す。

アメリカには二人の友がいる。
サンフランシスコには牝犬の柴犬クロエ。デンバーはシェパードとラブラドールの牝の雑犬ペニー。

幸いなことに、その友、言葉という面倒な障害がない。英語でのコミュニケーションを必要としない。

それに、この友、カーナビの必要もないほどに、近隣の道に精通しており、なんの障害もなく、私を案内出来る。

彼らは地元に馴染み、しっかりした近所付き合いを作り上げている。近所さんの仲間の犬もお供の人さまもが、近寄ってきては話しかけて来るほどの人気者なのである。

お陰で、私も、近所さんとは顔見知りになり、近所の事情がすんなりと頭に入り始めている。

だが、問題もある。

いつも同じ道筋を辿る。彼らの好きな道へと誘導しがちな、ことである。

そこで今は、そろそろとではあるが、犬どもから、主導権を奪取すべく秘策をねり、その機会を狙っている。

いつものように今朝も、孫たちと一緒になり、あのデカイ体のペニーがベッドに飛び乗ってきた。散歩の催促である。

犬も孫たちも、そう言うところには遠慮という曇りがない。

さっぱりとした明るい嬉しさを体いっぱいにし、それにアメリカの海も空も風も一緒に、ベッドに飛び乗って来る。

暇など入る余地などない、微かに幸せの香りがする穏やかなアメリカでの日常の始まりである。

こうした今も、まだまだ、主導権は、犬さまの手にある。

やはり、ここは敵地。主導権争いは、こちらにチャンスはないと、さっさと観念したほうが賢明だと、すでに諦め始めているのである。

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