水が際立ち、水の気に満ちた街、京都。
京は、それほど高くない北山,東山,西山の山々に囲まれた盆地の街。その地下には豊富な水脈が走る。

だが、その京都で使う水道水は99%を琵琶湖に頼り、残りの1%が地下水からの取水という。
一瞬、その事実に惑う。
水に溢れている京の景色を思い浮かべる。
水量豊かな賀茂川、鴨川、高瀬川。
京の街をひと味違う彩りを与えている高瀬川。

清い流れに囲まれた風情ある岡崎の邸宅街、上賀茂の屋敷街。

錦西陣織の染め糸、友禅の染料の洗いの一仕事している川。
地下水が生み出す豊かな滋養のテロワールで育んだ京の食べ物。
鴨川の納涼床、貴船、高雄のかわどこの鮎料理。
良質な水に恵まれ生まれた、伏見の銘酒。
地下水が原料となる湯豆腐、湯葉、生麩や和菓子。
肥沃な土壌と地下水が育てる京野菜で完成する、京料理と
京漬け物。
その京都が、琵琶湖から、もらい水していると言うのである。
私には、この驚きの事実がすんなりとは受け入れられず、早朝、ホテルから14km30分先の琵琶湖に、一気に車を走らせた。

三井寺の下に穿たれた隧道を辿り、大津の三保ヶ崎に着く。そこに、疏水揚水機場の施設を見つけた。
琵琶湖疏水の取水口は1894年完成の第一疏水と、更に18年後に建設された第二疏水。

ようやく、納得がいく。
常々、目にする度に違和感があった、南禅寺の大門のその先にある、レンガ造りのアーチ構造の橋は琵琶湖のとり水の水道橋であった。

その規模が違うが、フランス旅で立ち寄った、ポン・デュ・ガール、ローマの水道橋と同じ役割を担っていたのである。

もらい水している京都。
そんなことには、気づかずふりして目を伏せ、気をそらし、心は閉じる。
ふっと,覗いた路地奥でエプロン姿の女将さんが、水打ちをしている。
やはり、京都は、水の都である。
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