一旅27。旅先の昼食。その2。

日常の時間が、旅先では違った顔を見せる。

知らない未だ見ぬ地、同じ時間だが全く違った時の流れをしている。そんな時間、そんな瞬間を求め旅する。
特に、日頃とは全く違う姿を見せた旅先での昼食をあげてみる。

ギリシャ、ミコノス島。

この島の人々は、毎年夏の到来毎に家を全て塗り替え、コバルトブルーの海に生える、あの白の輝きを取り戻している。

家族と夏、エーゲ海のクルージングに出かけ、ミコノス島にも上陸した。
船上から見る以上に、この島の高低差は大きくかなりきつい坂を登り降りする。

そんな午後、長い影を作っている日差しの下のカフェで、猫と老人に混じって軽い昼食を摂る。
こんな旅先でのなんでもないランチが、家族との懐かしい記憶となる。

パリ、カフェ。

ヘミングウエイが繁く通ったと言う、モンパルナスのカフェ、ル・セレクトに立ち寄る。

フローズンダイキリ、カクテルクラシュドアイスと思ったが、さすがに思い止まる。
雨の降る日、雨に降られ入ってきた女性が、テラス席で

コーヒーを片手に雨に濡れる通りを眺める。
その姿を目にしたヘミングウエイは、おもむろに原稿用紙を取り出し書きしたためる。

   “美しい人よ。私は出会った。貴女は私のものだ。
    そうして、パリも私のものだ”。

残念ながら、そんな出会いは私には望めない。暑い夏の晴天の日、パリジャンたちはバカンスに出かけ、パリを歩くのは旅人だけである。

オランダ、アムデルダム。

こんな思い出を作る午後、旅ほど素晴らしい幸せなものはない。だが、新しいことをすると失敗が起こる。

何度も訪れたアムステルダム、宿も決まっている。何の魔が刺したか、巧みな広告に乗り中央駅裏の新しく出来たホテルを選んだ。

見事に失敗である。

それに、改装を終えたアムステルダム国立美術館への観光客で溢れ、中央駅前の広場は大改装中、この夏のアムスは、いつもの静かさがない。

そこで、昼食を勝手知ったホテルですることに決めた。運河沿いに建つ25部屋の洗練されたホテルが我が家族の定宿、ホテルピューリッツァー。

その中庭の人気のない静かなテラスで、軽い昼食をシャンパンおともに摂った。

コメントはこちらから

コメントの表示が遅くなる場合がございます。