一景36。下町の路地。

自宅からジムに繋がる横路が、大開発が進む中で綺麗さっぱり消え、街路樹もある立派な街路になった。

何だか、すっきり過ぎた気がしてならない。
街を仕上げるには路地もいる。路地が住み良い、住み易い街にと仕上げる。

こうした路地は、たとえ、誰の姿も見えなくても、何となく人の気配や生活の匂いがするもの。

昨日、春の陽射しに誘われ、上野の森に出掛けた。
お目当ては、東京都美術館でのエゴン・シーレ展。

迂闊であった。コロナ禍での今、どこでも予約者のみが入場出来る仕組みでの運営。

だが、上野の森はぶらぶら歩きにはもってこいの所。

芸大から寛永寺を抜け、谷中の墓地と向かった。
その墓地の先は、昔の面影を色濃く残している下町
今や、ちょっとした観光地を上回る、人で埋まった谷中銀座から離れ、下町情緒を色濃く残す谷中三丁目である。

石つくりの大正モダンな洋館のホテルを見つけた。
あちこちと欠けた壁と錆びて色落ちた看板に、すっかり旅気分になる。

ふっと、湯桶を抱えた湯上りの老人に気付き、彼に導かれるように、少し道幅のある横道から外れてみた。

その横丁には、今はすっかり姿を消した、昔ながらの風呂屋、米屋、八百屋、魚屋肉屋を、その先には、赤いポスト、温灸治療の看板をも見つけた。

さらに、不思議な曲がり方をしている路地奥にと、迷い込んでみる。そこは、人の温もりのする、そんな懐かしい昭和の路地であった。

どんな街にも、そこに住む人しか通らない横丁があり、その先には、生活がずっしり詰まった路地がある。
そんな路地には、猫も犬すらも、隅っこに自分達の居場所を作っている。

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