一皿41。しらす丼、鰻重、藁焼きカツオのたたき。

常々、速い旅を戒めているが、四国への旅が雨に降られたこともあり忙しいものとなった。

海に囲まれた島国、日本。津々浦々に港あり、海からあがったばかりの新鮮な肴を食べさせる店がある。

汝 欲することをなせ。 byフェイスク・ウドラ

この旅、瀬戸内の肴を求め四国の港町に潜り込む旅。淡路島を縦断し四国への玄関口、徳島に渡る。

そのまま、穏やかな瀬戸内海沿いに車を走らせ、高松、坂出、そして小さな町、多度津に向かった。
その地には、友に薦められた思い出の残る小料理店、“みなと新世”がある。

瀬戸内の魚を思い切り楽しみ、その町の小さなホテルに宿をとる。

翌朝早く、日本列島で最も細長い佐田岬半島、その最先端の佐田岬に。そここそが、カタクチイワシの稚魚しらす評判の漁場。

その海辺に、鮮度を大切にする“編みあげ” 漁法で捕獲した、しらすを食べさせる、しらす丼専門店がある。
キラキラと輝く海を眺めながら、大盛りのしらす丼を目一杯かき込む。

流石、うまい。
雨雲の合間から漏れる、陽光が眩しい。

次に目指すは、伊達家の藩政で栄えた風情ある10万石の城下町、宇和島。この海辺の街で、豊かな瀬戸内の肴と地酒での夜である。

無念、読み違い。

地方都市の日曜日は、飲食店がほぼ休業である。腹を満たすだけの寂しい夜となってしまった。

そうなると、俄然、早起きとなる。

四万十川を一気に超え、日本一の清流、仁淀川に急ぐ。仕込み水を、その仁淀川に求めた銘酒、 船中八策の司牡丹の酒蔵への表敬訪問である。

朝から、雲行きが怪しい。心配していた雨が道半ばで降り出し、気づくと、四万十川を下流と走らせていた筈が、何と途中から上流へと逆戻りしていた。

ロバート・ハリスではないが、“優れた旅人は、自分がどこに向かっているかわからなくなる。迷いの浮遊感、道に迷い何時間も彷徨し歩く事こそ旅の醍醐味”、と慰せる。

あの沈下橋が目に入り出した折には、予定より2時間も遅れ。朝食を摂っていない。四万十川も清流、そこで採れた鰻も悪いはずがない。

一気に妥協である。

そこで、見つけたのが四万十川の下流に位置する、創業1967年の老舗四万十屋。
雨で水嵩の増えた四万十川が望める縁側にあるテラス席に運よく座れ、四万十川で取れた自然鰻、その鰻重を頼む。

引き締まって歯ごたえがある。身が厚く柔らかい養殖ものにはない、噛む程に味わいが楽しめる。
だが、私には、少しガッツリ感が過ぎていた。

無念が残る。

次回こそ、仁淀川の川辺に宿をとり、司牡丹船中八策をお供に、わさび醤油で“仁淀川鰻の白焼き”。そんな日本一の清流尽くし、の夜を過ごす。

そんな日本一の清流尽くし、の夜を過ごす。

今宵は、最終目的地、城下街、高知。
ホテルでシャワーを浴び、帯屋町アーケードのひろめ市場に向かう。 

酒好きな地元の人たちで埋まった土佐弁が飛び交うテーブルの端に、席を確保。
藁焼きカツオのたたきは当然、今朝、水揚げし鮮度抜群の魚の刺身を大皿に盛り、席につく。これこそが、旅の醍醐味である。

翌朝早立ちし、一気に四国を縦断し、岡山を経由して京に向かう。
旅の締めは、あの親父が待つ京の街“やました”で、四国での成果を自慢をしながら、肴談義である。

 

 

 

 

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