一皿42。鱧。ハモ。

京に来ている。
そうなると、当然のように、夜は“やました”のカウンターとなる。

祇園祭りに少し早いこの時期、梅雨の雨を飲んで旨くなると言われる鱧がある。この鱧、夏場の京都には欠かせない旬の魚。

昔の話になるが、大分、中津の城下町で、明治34年創業と言うから百余年の歴史を抱える料亭「筑後亭」で、鱧料理を食べたことある。


その折、中津の鱧は獰猛な肉食魚で夏の暑さにも耐え、遠い京の都まで運ばれていたと、女将が語っていた。

その話を、大将にしたところ、笑いながら背後にある水槽で勢いよく泳ぐ鱧を指しながら、“今は、韓国から入れている”、と答えた。

鱧は、ありがたい魚らしい。
造り、酢の物、焼きもの、揚げもの、そうしてハモしゃぶと、魚の少ない夏場は、京には、なくてはならないとか。

カウンター越しに、鱧の骨切りのザク、ザクという音が聞こえてくる。

期待通りの夜になりそうである。
今宵も、大将の勧めるまま。

先ず、明石港から入れた、小粒の牡蠣にジンを垂らし出る。
旨い。
大将の故郷、金沢の銘酒、「手取り川」に良く合う。

期待通り、鱧が出た。
ハモ料理の華、「おとし」。梅肉添え、脂がのっているわりに後味はさっぱり。

鱧尽くしと思いきや、次に出てきたのが、生きの良いオコゼ。
一匹丸ごとを、刺身と唐揚げ、そうして吸い物に仕上げて出てくる。

締めは、やはり、鱧である。鱧のにぎりを、薄塩とカボスが掛けて二貫。

酒のすすむ、期待をはるかに超えた夜となった。

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